古武術競技会

大会設立の動機

研鑽や練磨のために、古武術の技を試合で確かめる場を作ろうと言う試みは様々な所で、色々な考えを持った方々が試行錯誤を重ねつつ努力しておられます。
試合の場を作る試みを行っている方々の多くは、古武術の流派や団体を超えて、技や技術を磨きあう場を作り、自他の技を深め、古武術を愛好する仲間に貢献したいと言う思いを持たれていると拝察しております。
勿論すべての個人や団体を満足させる場を作ることは大変困難なことです。
この困難な課題に多くの方々が様々な角度から取り組まれ、色々な団体やイベント、大会が創られ成果をあげておられます。

 この様な状況の中にあって、私たちができることは既に無いのだろう思っていました。
そんな中、古武術の競技化と言う視点はどうだろうか?と考えるに至りました。
しかし、伝統文化でもある古武術を競技化することはダメだと言う考えもあります。
当然の考えです。文化の保全はとても大切なことです。競技化することで心や歴史に培われた精神の部分が損なわれる恐れがあることも事実です。
この考えは古武術を語る上では大前提であり、絶対的なものと思います。
この精神を失えば、日本の民族としても古武術愛好家としても成り立ちません。
ですから、私たちはここに述べた精神に立脚した上で、古武術愛好家の皆様に交流と練磨の場を提供するに当たって、自らを律してこの事を肝に銘じる必要があります。
ルールの策定や組織作り。コンセンサスの形成など多くの難問を乗り越えなければならず、多くの方の賛同と御助力が無ければ実現は難しいと思います。

 この様に古武術の競技化は文化を損なう恐れもあって大変難しいものですが、競技化への挑戦をやってみようと言う思いに至ったのは、古武術に触れた事が無い人にとって古武術の技や演武は「とてつもなく難解」だと言う事。「日本の文化なのに知らない」がきっかけでした。
「古武道・古武術って何?」から始まり、「説明してもピンと来ない」。「型って振り付けの事?」。
古武術を知らない方からの投げかけに困惑していました。
そんな折に、高名な歌舞伎俳優の方が仰っておられた言葉にハッとさせられました。
「日本の固有の文化と言いつつ、80%の人が見た事が無い。これではいけない。」
正確ではありませんがこのような主旨でした。
そして歌舞伎界の方々は若手を中心に様々な工夫と努力を重ねられて、今や古典芸能でガラスケースに収まる文化財ではなく、伝統を既存することなく、活きたエンターテイメントに昇華されています

 この様な方々には遠く及ばないとは思いますが、万分の一であれ、何がしかの足跡を残したいと思います。